(執筆:CNAレポート・ジャパン 橋本啓介)

 


 リーマンショックに端を発した世界規模での景気の後退や、新型インフルエンザへの警戒、地球環境保全の動き、災害やテロ問題など閉塞感ただよう状況の中、グローバル化する企業においては、いかにして事業継続や持続的成長、企業の社会的貢献を実現していくかが喫緊の課題になっている。そして、社員の働き方もかわりつつあり、ワークライフバランスへの要望も高まりつつある。

 企業が事業体として生まれ、そして生き続け、繁栄しつづけていく前提となるのは、構成員である人と人とのコミュニケーションの存在である。人間の全ての活動の原点は、コミュニケーションにあるからだ。それは日常生活でも、日々の業務の遂行や課題解決・実施においても、ビジネス関係においても、然りである。それらは人と人との間のコミュニケーションの積み上げの結果として形作られるもの。従って、人と人とのコミュニケーションを促進していくことがますます重要になってきた。実は、コミュニケーションツールであるWeb会議システムなどの遠隔会議システムは、企業経営、事業継続の基盤に重要な役割があるのだ。そのため、遠隔会議システムは、長年注目されてきた。

 
                         

出典:TeleSpan Publishing Corporation, Electronic TeleSpan December 3rd,2007 Vol.27 No.38(遠隔会議システムグローバル市場統計)



*出典:株式会社シード・プランニング 2009年版 テレビ会議/Web会議の最新市場動向

 


 市場規模という観点から企業での導入が進んでいることを裏付けるデータがある。

 1981年より遠隔会議システム市場を専門に市場調査をおこなってきた米テレスパン・パブリッシング社によると、遠隔会議システム全体のワールドワイドの市場規模(売上ベース)は、2000年約30億USDであったのが、2007年には50億USDへと拡大していると報告している。

 そのなかでとりわけ、Web会議システムのセグメントが大きく成長しているという。2000年数億USDであった規模は、2007年には、10億USDまで成長している。

 遠隔会議システムは、Web会議、テレビ会議、電話会議から成るが、成長率から見ると、“古参”のテレビ会議や電話会議に比べ、“新参”のWeb会議システムは大きく伸びている。ちなみにWeb会議システムのセグメントは、サーバー導入もしくはASPサービスによるものから構成される。

 一方、日本の遠隔会議システム市場については、株式会社シード・プランニングが遠隔会議システム市場に力を入れて統計を取っているが、同社の統計グラフによると、2007年は約300億円。これが同社によると、2018年には、2000億円程度まで成長、その中で、Web会議システムが半分の1000億円規模を占めるレベルまで急激に拡大すると予想されている。

 その背景として、企業へのPCやモバイル端末(スマートフォン)の浸透とともに、ブロードバンドインターネット環境の普及が後押しするだろうと見られている。

 
                         





 遠隔会議システムがどのように他のシステムと連携もしくは統合してきているか。現状では、IP電話や一般電話、携帯テレビ電話の他、インスタントメッセージング、ストリーミング、グループウェア、基幹業務システムなどがプレゼンスを軸に継ぎ目なくシングルインターフェイスに統合されてきている。今後は、他のユニファイドコミュニケーションシステムとの相互連携や、SaaSやクラウドコンピューティングの動きも地平線に見えてきたが、段階を追って順番に実現されているというよりも、それぞれがお互いに重畳的に動いている。Web会議システムは、その中で、PCアプリケーションであるということが、他のシステムとの連携もしくは統合しやすくしているといえる。

 PCベースのWeb会議システムは、ユファイドコミュニケーションの重要なコンポーネントアプリケーションと言い切る欧米のUC業界関係者もいる。それについては実は過去にも似たようなことを言及した人がいた。2001年の北米の展示会TeleConで開催されたパネルディスカッションで某会議メーカーのトップが「遠隔会議システムは、単独のアプリケーションからコミュニケーション技術の統合への動きの中でコンポーネント化していくだろう。」と予想していた。使われた言葉は、convergenceではあったが、つまりそのころからユニファイドコミュニケーションへの動きは予想されていたわけだ。現実に今、他のコミュニケーションシステムや業務システムと連携もしくは統合しようとして遠隔会議システムメーカーとユニファイドコミュニケーションベンダーなどが提携などを行っている。

 
 
 遠隔会議システムの利用用途も広がっている。90年代にも利用用途は広がっているといわれたこともあったが、今の広がりは以前と比べ本格的と言える。既に述べたインターネットやPCの普及など、遠隔会議システムを取り巻く技術の進化が下地になっているからだ。90年代は、今のブロードバンドとは違い良くてもISDN回線で、PCも今ほどCPUは強力ではなかった。

 もともと出張を削減することによる効率化やコスト削減ツールとして認識されることの多かった遠隔会議システムだが、利用用途の広がりとともに、新たな商機を発掘あるいは、顧客サービス展開のためのツールとしての認識も広がってきた点も見逃せない。たとえば、サービスの受付、カスタマーサポート、授業レッスン、ウェブセミナーなどにも使われてきている。遠隔会議システムを活用した新たなビジネスモデルを作り出すことで利益増を図りたいという企業のニーズに合致することが出来るレベルまで遠隔会議システムが進化してきた左証と言える。

 それに加えて、事業継続の一環としての災害やテロ、パンデミックなど対策に有効なツールとして、または、CO2の削減効果、テレワークなどによるワークライフバランスの実現などのメリットに対する認識も広がっている。

   
   
  こういった市場でのさまざまな動きは、Web会議システムをはじめとした遠隔会議システムに、性能や機能、ユーザインターフェイスなどの充実化をもたらした。それに加え、導入価格も以前に比べ導入しやすくなっている。また一昔前のネガティブなイメージを払拭しつつあり、企業が広く導入できる下地が揃ってきたことは間違いない。

 加えて、以下の<コラム>で紹介した1970年代の「Networked Nations」の夢、つまり、「コンピュータをつかって、お互い疎遠になりがちな遠隔の人と人とをつなぐ」コミュニケーションの環境が30年という長い歳月を経てようやく本格的に実現したといえるだろう。

遠隔会議システムはこれからもますます面白い業界になっていく。
   
   



Web会議システムの考え方の源流は1970年代。しかしWeb conferencingの言葉は、90年代後半頃から。

 その源流を辿っていくと、もともとの考え方は、1970年代にさかのぼる。ちょうどコンピュータ黎明期で、コンピュータをつかって、お互い疎遠になりがちな遠隔の人と人とをつなぐことができないかという発想が生まれた。遠隔の人と人とをつなぐということが、遠隔会議システムの本質であり、存在意義であるからだ。

 その考え方を書籍という形で具現化したのは、北米で同じ1970年代に発刊された「The Network Nation: Human Communication Via Computer(著者:Starr Roxanne Hiltz, Murray Turoff)」という本だ。この本は、コミュニケーションやコラボレーション技術を考える欧米の人達のバイブルにもなっていると聞く。

 Web会議システムは、英語では、Web conferencingであるが、しかし当初からWeb conferencingという言葉は存在したわけではなく、当初はcomputerized conferencingという言葉がその本では使われている。その後1980年代には、Computer Based Information Exchange(CBIE)や、Audio-graphics、もしくはtelewriterなどと一般的に呼ばれ、電話回線とコンピュータ装置を使った遠隔地間での情報共有システムとして進化した。

 Web conferencingという言葉は、筆者が欧米の文献を調べたり、北米などの専門家に問い合わせたりした限りだと、1997年後半ぐらいからインターネットの普及と軌を一にして雑誌などのメディアに散見されるようになったようだ。しかし、そのころは、まだmultimedia communications for the Web Sites(webサイトを使ったマルチメディアコミュニケーション)、Presentation on the web browser(ウェブブラウザを使ったプレゼンテーション)などと書く専門家やジャーナリストもいたし、遠隔会議バイヤーズガイド(購入予定者向けの解説書)などにもISDNテレビ会議向けのデータ共有機能という意味でdata conferencingという製品カテゴリーはあったが、PCでデータ共有をするWeb会議システムの記述はなかった。つまり、技術としては誕生していても一般的な認知度は低かったからだろう。

 しかし、今までの歴史的な流れをみていると、Web会議システムのアプリケーションとしての原型は、90年代のデスクトップテレビ会議システム(PC上で動作するテレビ会議アプリケーションソフトウエア)にあるような印象を持たざるを得ない。なぜなら、筆者も所有している96年頃購入したISDN回線対応のPCテレビ会議システムは、見た目には今のWeb会議システムにほぼそっくりだからだ。Web会議システムの基本的機能と言われている、アプリケーション共有、ホワイトボード共有、デスクトップ共有、チャットなど全て搭載していた。今から思えば、ISDN版Web会議システムだったと言ってもおかしくはないだろう。ちなみに、そのころマイクロソフトが開発しPCテレビ会議システムと呼ばれていたNetMeetingを最近ではWeb会議システムと言う人もいる。

 このようにして、90年代以来、デスクトップテレビ会議システムとWeb会議システムといった呼び方の重複が一時期あったのだが、最近は、PCでのこういったコミュニケーションツールを、Web会議システムという名称で一般的には認識される方向に向かっているようである。ちなみに、一方で、テレビ会議システム(ビデオ会議システム)は、専用端末を指すようになってきている。

 いずれにしても、昨今のWeb会議システムの広がりは、PCとインターネットの普及に負うところが大きい。Web会議システムは、コミュニケーションツールとしてPCで動作するひとつのアプリケーションであるからだ。またそもそもインターネットというネットワークというコミュニケーションツールが動作する環境がなければ、Web会議システムの存在はありえなかったといっても過言ではない。

 Web会議システムというのは、数年前にどこからともなく現れてきたものではなく、遠隔の人と人とをつなぐという問題意識に根ざした、技術者たちのコミュニケーションツールに対する長年積み重ねられてきた努力の結晶でもあるのだ。

このコラムでの話はWeb会議システムを理解する上で重要な歴史的側面である。

*amazon.comによる書籍情報:The Network Nation: Human Communication Via Computer(著者:Starr Roxanne Hiltz, Murray Turoff)

     





http://www.meetingplaza.com/

 MeetingPlaza(ミーティングプラザ)は、NTTの研究所で開発されたWeb会議システム。NTTアイティが2001年より販売開始してから累計社数は、2500社。システム販売とASPサービスの2種類を提供。ASPは、月額2500円の格安メニューから使い放題の定額メニューまである。同時32拠点接続、会議中でも変更できる6つのレイアウト、最新のエコーキャンセラNOER(ノエル)の搭載、H.323テレビ会議との接続(MeetingPlazaコネクト)などが特長で、最近パンデミック対策支援ソリューションを発売した。MeetingPlazaとmagicConnect、EasyCommunicatorを組み合わせたソリューション。







http://www.jm-s.co.jp/

  Web会議システム「LiveOn(ライブオン)」は、100%自社開発しており、顧客のニーズに柔軟に対応できる点が特長。また音声品質については、独自の自動帯域制御機能や音声ジッタバッファ制御機能を採用することで音声の途切れや遅延を極力カットする工夫がされている。また音声のサンプリングレートが8〜32kHzまで対応、加えてノイズリダクション機能でCD音質に近い品質を提供している。また機能も充実しており、自動再接続、画面構成の自由度の高さ、メディア再生などの点にも同社の“こだわり”があるという。LiveOn ASPサービスとLiveOnイントラパックサービスを提供している。ユーザからは使い勝手やサポートの良さを評価されている。





http://www.vcube.co.jp/

 ブイキューブでは、Web会議システム「nice to meet you」をASPサービスとライセンス販売で提供している。用途に応じて最大50人まで対応した「nice to meet you ミーティング」、最大2000人まで対応したオンラインセミナー対応の「nice to meet you セミナー」、1対1の映像と音声によるオンライン営業・サポートに対応した「nice to meet you セールス&サポート」、PCや携帯などへのライブオンディマンド配信に対応した「nice to meet you ビデオ」を提供している。Windows PCの他、Mac OS X、Linux、あるいはH.323に対応したビデオ会議システム、3Gテレビ電話携帯のnice to meet you への会議へ接続が可能。最近CO2削減やコスト削減状況を可視化する「ECOメーター」などを発表している。




http://www.canon-js.co.jp/

 キヤノンソフト情報システムでは、Windows PCとブラウザに対応したIC3(アイシーキューブ)Web会議システムを提供している。IC3は、SI型の特長を生かし柔軟なシステム構築とセキュア(SSL)な遠隔会議を実現している。動画ファイルや、3Dなどの特殊な描画機能を持つアプリケーションの共有に特長がある。特定のアプリケーションのみに限定した共有にも対応。アパレルCADシステム開発を行う企業では、IC3を使って、CADソフトユーザへのサポートや、ソフトウエアをインストールしたPCへのリモートメンテナンスサービス(リモート操作)などによって、サポート要員の出張削減や迅速なトラブル解決に役に立っているという。
 





http://www.oki-networks.com/jp/

 OKIネットワークスでは、コスト削減と業務効率の改善を求めるユーザに、IPstageSXとCom@WillソフトフォンによるFMCまで実現する電話運用システムを提案している。「拠点間通信コストを削減したい」、「社内/外で内線を複数台持つのは面倒」、「いつでも簡単に効率よく社員とコミュニケーションを取りたい」といったニーズに最適解で、Com@Willは、電話帳検索からのクリック発信、テレビ会議機能、画面共有/アプリケーション共有、スマートデュオ(ハンズフリー)機能などが特長。またPHSや多機能のビジネス電話とも機能連携させることが可能。



ヤマハ株式会社 会議用マイクスピーカ、音声会議システム、映像ソリューション

株式会社シード・プランニング 2009年版 テレビ会議/Web会議の最新市場動向

米テレスパン・パブリッシング社(TeleSpan Publishing Corporation)

 






第1回:情報通信設備展 ビジネス・コミュニケーション東京2009レポート